02:都市の陰り

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「分かった。あんたの話しを聞く。」 「賢明だな。」 男はそう言うと近くの壁に背中を預ける。 「まず、お前はどの程度この世界のこと知っている?」 護は地図で見た大陸とサーシャから教えてもらった僅かな知識を男に話した。 「やはり、その程度か。」 男は最初から想定済みだったのか大した反応もせず話し始めた。 「この世界の時間概念についてお前はまだ知らないな。」 「あ、あぁ」 この世界の時間。 簡単に言えば護は今何月何日の何時なのか。 この世界では、それをなんと言えばいいのか。 それが分からないのだ。 「これについては恐らく大丈夫だろう。大陸によって違いはあるが略お前の居た世界と同じなはずだ。」 そして男は、今七月の二十四日時間は二十一時ぐらいだと教えてくれた。 「次に文字、金銭の類いについてだ」 「金銭については知らないけど文字はこうしてあんたと会話出来ている以上元居た世界と同じじゃないのか?」 この男に限った話ではなく護はサーシャとも普通に話すことが出来たのだ。 護が唯一話せる日本語で。 「会話と文字は別だ。この世界ではどんな言葉だろうと互いに意志疎通はできる。お前の世界みたいに他の言葉を覚える必要はない。」 男がテーブルの上に一枚の紙片を放る。
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