02:都市の陰り

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「学べば使うことは可能だ。しかし、万物には加護を蓄えるための器がある。大小様々だが過度な消費は身体の衰弱を意味し、枯渇は死を意味する。」 「なら、無駄に使えないのか。」 消費すれば衰弱。 枯渇すれば死。 護の中で魔法とは何でもできる奇跡そのものだと思っていたが とんだ、諸刃のやいばだった。 「一度に多用しなければ問題ない。時間が立てば回復するし食事で体内に取り込むこともできる。」 だが、お前には必要ないことだろう。 と、男は小さく吐いた。 「そうか。魔法は分かった。それで俺達がバラバラにこの世界に来た理由は?」 「俺が話せるのは魔法についてまでだ。その答えは自分で探せ。」 男は話しを戻し、再度他の皆について話していく。 「奏は今南の大陸で女王になり民をまとめている。陣はギルドに加入し東の大陸の小さな村で活動し、火向、いや竜也に限っては今の所俺の方でも把握出来ていない。」 奏が女王で陣がギルド員竜也に限っては所在不明。 状況整理に頭が回らない護。 しかし、どんなに頭が回らなくとも目の前の男には訊かなくてはならないことがあった。 本能が訊くなと訴えかけてくるのがわかった。 頭が回らないのも最悪の結果を想像したくないからだろう。 それでも、護は訊かずにはいられなかった。 「火向姉弟の姉。か、楓は今どうしている。」 静まり返った部屋で男はただ一言。 「死んだよ。竜也を庇ってな。」 護は何となくだが分かっていた。 目の前の男は最初から楓の名前は言わなかった。 多少の違和感は感じていたが気のせいだと気付かないふりをしていた。 そう、最初から分かっていたのだ。 それなのに、覚悟していたのに護は溢れる涙を堪えることが出来なかった。
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