02:都市の陰り

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正確に言えばアーニャではなく、アーニャの後ろでくるくると回っている尻尾を見ずにはいられなかった。 「やぁん♪そんな尻尾を見つめられるとお姉さん困っちゃう。」 「あ、いや………その。初めて見たもので。」 別に疚しい気持ちがあったわけではないのだが護は尻尾から目を反らす。 「ふふん。君、獣人族見るの初めて?」 僅にアーニャの目が獲物を見つけた獣の様に鋭くなった気がした。 「えーと。はい、初めてです。」 「私はね、猫妖精種(ケットシー)って言って半分猫で半分人なの。」 半分が猫。 だから彼女の身体にはその特徴である耳と尻尾が付いていると言う。 「本物かどうか触って確かめてみる?」 護自身かなり気になっていたので考えることなく彼女の言葉に甘えた。 「あの、じゃあ耳を触ってもいいですか?」 確か動物は尻尾を触られるのを酷く嫌がると言う話しを小さいとき訊いたような気がした護は尻尾を避け耳を選んだ。 隣に座り、無言で頭を差し出すアーニャ。 黒く艶やかな毛並みで覆われた耳が不規則に跳ねる。 「じゃあ失礼します。」 護はそう言ってアーニャの耳へと手を伸ばした。 「すごいですね。本当に本物だ。」 護は毛並みに沿って頭を撫でる。 さらさらとした触り心地が何ともいえない。
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