02:都市の陰り

25/39
前へ
/70ページ
次へ
用紙を渡された護はやっぱりかと、内心舌打ちをした。 護はこの世界の文字を知らない。 それは今後の護の行動に付きまとう一番の壁。 護はアーニャの顔を窺った。 紅潮した顔と濡れた鋭い目。 間違いなくアーニャは怒っている。 当然そんな彼女に文字が書けないなどと言えない護は悩んだ末、1つため息を溢し自分の知っている文字を用紙に書いてアーニャに渡した。 「この文字はどこの文字?見たことないけど。」 「こちらの文字は今勉強中で俺の居た場所の文字を書かせてもらいました。」 「そう。じゃあ何て読むのか教えてもらえる。」 護は用紙に書いた自分の名前をアーニャに教えた。 「星見 護ね………」 アーニャは護の傍に寄り護を見つめる そして――― その頬を力一杯に叩いた。 「護。ギルドに加入したなら覚えておきなさい。命を賭することはここでは絶対に認めない。」 明日、またここに来なさい。 そう言ってアーニャはカウンターの奥の部屋へと消えていった。 護は仕方なく建物の外へと出た。 「っ痛。」 アーニャに叩かれた頬に熱がこもっている。 「明日またか………。」 明日まで何をしようか。 護はギルドの前に座り考え込む。 「おや?護君ではないか。」 声のした方を向くと昨日診療所で会った白衣の男性が小さなケースを持って此方に向かってきた。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加