02:都市の陰り

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「あ、えーと」 気づいたら護は男の名前を知らなかった。 どうやら相手もそれに気づいたらしく 「私はコルネ。先生でも何でも好きなように呼びなさい。」 と気さくに名乗った。 「じゃあ、先生で。先生は今仕事中ですか?」 「はは、まあね。今街は大変な時だから私みたいな旧市街区の医者でもこうして新市街区や商業区を行ったり来たりさ。」 「街が大変とは?」 護の発言にコルネは驚いたようで目を丸くした。 「護君は今この街がおかしいとは思わないかね?」 そう言われて護は思い出す。 「そう言えばほとんど人を見かけないですね。」 護がずっと感じていたこと。 よくよく考えればこんな大きな街で人を全くと言っていいほど見かけないのは不自然過ぎる。 「今、この街では星退病が流行っていてな、外に出られる人間はほとんどいないのだよ。」 「星退病って何ですか?」 「知らないのも無理はない。この病気は非常に珍しい病気だ。」 珍しいとはどういうことか。 何故、そんな病気がこの街で流行っているのか。 護はコルネの話しを真剣に聞いた。 「この病気は発病者の星の加護が少しずつ減退していく病気なのだが、本来ならこの病気を発病する者は極めて極端に少ないはずでな。」 星の加護が少しずつ減退していく病気。 ―――まさか。
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