01:始まりを告げる流星

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ふと目が覚めた。 老朽化の進んだアパートの薄暗い一室。 閉めきったカーテンの隙間から細々と光が射し込むベッドの上。 少年は起き上がると、体を軽く伸ばして辺りを見回した。 ベッドの周りには食い散らかしたゴミと脱ぎっぱなしの衣類 おまけに芸術とも呼べなくもないほど複雑に絡んだ配線類が蔓延っている。 見慣れたその光景に何故か安心感を覚える青年は あぁ、ここは間違いなく自分の部屋だと一人納得した。 「ん、なんか嫌な夢を見たな。」 背中を伝う汗に不快感を感じながら青年は一人呟いた。 本当に嫌な夢だった 中学の初めての夏のある夜の出来事 忘れたくても忘れられない 今の自分の状況を作ったといえる元凶。 思い出しただけで忌々しい のだが、自業自得なだけに情けないと項垂れる。 あの夏の夜――― 少年は物心ついた時には見えていたであろう発光体に飛びかかった。 結果。転落。 十階建のマンション、しかもその屋上から命綱無しの文字通り、決死のダイブを決めた。 少年は運よく、救助隊に助けられることとなり全身に怪我を負いながらも少年は一命を取り止めたのである。 その出来事は各ニュースに取り上げられ少年は瞬く間に有名人となった。 奇跡の体現者として ではなく、幻覚に侵された異常者(馬鹿)として。
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