02:都市の陰り

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「君さえ良かったら今後も娘と親しくしてはくれないだろうか。そうすれば娘の世界はもっと広がるだろう。」 護は当然それに頷いた。 「ありがとう。………では話しはここまで。娘が心配していると悪い。すまないが娘の所に行ってやってくれ。」 護は失礼しましたと退室した。 後ろで聞こえた苦しそうな咳を聞き逃さずに。 「ふう、ちょっと疲れたな。」 部屋から出た護は、そのまま扉に背を預けた。 時間が経つのは思いの外早く、窓から覗く夕陽が廊下を同色に染める。 護は先ほどのウィゼルの言葉を頭の中で何度も再生した。 娘と親しくしてはくれないだろうか。 ただ、それだけの言葉が護の頬を弛める。 「お願いされたからには頑張るしかないよな。」 「何をお願いされたのですかぁ?」 「―――!!」 不意にサーシャに声をかけられ心臓が大きく跳ねる。 「えっと………何時から?」 ウィゼルの言葉で完全に自分の世界に浸っていた護はサーシャの存在に気付かなかった。
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