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「護が出てくるのをここでずっと待っていたのですよぉ。」
「そ、そうなんだ。ありがとう。」
「気にしないでほしいのですよぉ。それに私自身護に言っておきたいことがあったのです。」
数秒、辺りの一切の音が消えたその場でサーシャは護に深々と頭を下げた。
「ごめんなさいなのです。」
きっと、本当はあの夜の広場で星退病のことを打ち明けた後に伝えるはずだった言葉………
「サーシャ。それはこの街に連れてきてってこと?」
頭を下げたまま反応はない。
護はそれを肯定と捉えた。
「さっきさ王様からも同じことを言われたよ。」
サーシャが顔を上げる。
「お父様が?」
「そう。娘が君をこの街に連れてきて本当にすまないって。」
その言葉にサーシャの瞳が濡れていく。
「だから、これは王様にも言ったけどその事で俺に謝る必要はないよ。寧ろサーシャに感謝してるくらいだしさ。」
「え?」
護はサーシャの潤んだ瞳を見つめた。
「サーシャが居たから森で行き倒れにならなくて済んだ。今更だけどさ―――」
護は照れくさそうに頭掻いた。
「この街に連れて来てくれて本当にありがとな。」
サーシャの顔が歪んだ。
つぅ……、と涙が頬を伝う。
サーシャはしゃくり上げた。
溢れた涙が堰を切ったように次々に流れ落ちていく。
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