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玄関で靴を履いていると、ふと背後に気配を感じたので振り返る。そこには見慣れた気怠げな顔があった。
「なんだよー、お姉ちゃんに挨拶はー?」
姉さんは少々口を尖らせて見せる。それに俺は呆れ顔を返した。
「言わなくていいって言ったのは姉さんだろ」
「そうだっけー?」と首を捻る姉さんに、俺は溜め息しか出ない。「そうだよ」と言ってやると、むーむー唸りだした。しかしすぐに終わる。
「ま、いっかー。とりあえずいってらっさーい」
これから学校だってのに、そんな気の抜けた声をかけるのは止めて頂きたいものだ。ただでさえ疲れるっていうのに……。
軽く溜め息を吐くと、姉さんの頭をポンポンと叩いてから口を開いた。
「行ってきます」
姉さんが、俺が叩いた所に手を当てながら睨み付けてくるのを無視して外に出る。そして愛車の下に向かい、鞄を籠に入れてから鍵を差す。それからサドルに跨ってペダルを漕ぎ出した。
うん、今日も愛車は調子が良い。スイスイと進んでいく。
初夏の爽やかな風に背を押されながら、俺はテンションを上げつつ学校に向かうのだった。
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