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「私は、高崎晃希なんていう人間じゃございません柏木涼子様。どうかお引き取りを願います」
この快活そうな黒いショートヘアが印象に残る少女は、柏木涼子(カシワギリョウコ)という。俺の小学校時代からの腐れ縁だ。中学、高校も一緒の所だと言うから驚きだ。
見た目は可愛いが、口の悪さが天下一品。付き合ってるとか、そういった色気ある情報は聞いたことがない。身長は俺の肩くらいまでだから、女子の中では高い方だろう。胸がないのが残念。良く言えば、スレンダー系ってやつだ。涼子が呆れた様子で口を開く。
「私の名前出した時点で負け確定じゃない。しかも私があんたのその、変態ですってアピールしてるような顔を見間違える訳ないでしょ。何年間つるんでると思ってるの?」
「そこまでひどい顔じゃないはずだ! だが涼子は一つ大きな勘違いをしている。俺は変態ではなくエロいんだ! そこを間違えるな!!」
「……相変わらず、晃は馬鹿ね。まぁ、良いわ。とりあえず、どうして男のあんたがこんな所にいるのかしら?」
「どうしてって、姉さんへのプレゼントを買いに来たのさ」
この階は女性向けの洋服売り場だ。それならば、姉へのプレゼント目的って言えば特に問題はないはず。
だが、周りを見渡した時に目に飛び込んできたのは、洋服だったが想像とは違った服だった。
…………パンツ?
…………ブラジャー?
「へー。最近は変わったファッションが流行ってるんだね」
「……スルーしていいかしら? とにかく、お姉さんに下着をプレゼントするなんて頭おかしいんじゃないの?」
くっ、ここまで言われるとは。やはり、下着売り場っていう事実は覆らない。どうしようか? 理由もなく下着売り場を携帯片手にうろついている、そんな男子高校生って明らかに――
「変態じゃないか!?」
「だからそう言ってるでしょ。どうやら、晃もここまでのようね。ちょっと待ってて。今、警察呼ぶから」
まずい。涼子ならやりかねない。どうにかして話題を逸らさなくては……
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