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「無理は承知の上だ。だがその分破格の報酬を払っているだろう」
確かに無理難題を言ってきている分、報酬はかなり良いのは事実だ。実際それで飯を食っていると言ってもいい。
「……わかりました。人間界にいるやつらにも連絡して探させますよ」
「それで良い。ターゲットリストは持っているな?」
「はい。しかしあのターゲットリストは……」
俺の言葉を遮るように、依頼人が嫌そうな顔で俺に言う。
「いちいち気にしていては仕事にならんぞ。お前ら過激派はそういう、他人にはできない汚い仕事で生計を立ててるんだろう? だったら口応えせずに仕事するんだな。」
「……わかりました」
そう答えて、酒場を足早に後にする。店の外に出て気分転換にタバコを吸う。しかし糞ったれな仕事だ。ヘドがでる。いくら、俺たちが便利屋だからって限度がある。さすがに、子供を殺すのは気が引ける。
ターゲットリストに目を通すと、ほとんどが高校生くらいの人間なのだ。その事実は、覆ることはない。
本当にこんな奴らが、大聖核に関わっているのだろうか?
路地裏の随所に設置されている、鏡の前に立つ。連絡を取るためには、必要不可欠な品だ。
とりあえず鏡の前に立ち、人間界の仲間が出るのを待つ。しばらくして気弱そうな男が現れた。
「よう。久しぶりだな」
「……久しぶりですね。一体なんですか?」
心底嫌そうな顔で、男は応対してきた。さすがに俺が絡むと、厄介な事になるのは分かっているのだろう。
「仕事だ。今から送るターゲットリストに書いてある人物の中から一番近くにいる奴を殺せ。逆らったらどうなるか分かるよな?」
「……分かりました」
そう言って鏡から男は消える。おそらくだが、すぐには実行しないだろう。まぁ、しばらくは待つことにしよう。
俺は面倒くさい監視に見つかる前に、左頬にある大きな傷痕を掻きながら路地裏を後にした。
だが、世界はこんなことも知らずにいつも通りの日々を刻んでいる。
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