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「まさかお前……加工された材料しか見たことないです。とか言わないよな?」
そんな事を言われたリアンは、ドキッとして即座に対応する意思を見せる。
「精一杯手伝わせていただきます」
「じゃあ俺は肉削いでるから、爪と牙を抜いといて」
「はい」
早速、各自でナイフを構えてリアンは首の方から、ケイラが胴体の方から始めた。
「これがバイラスの爪と牙ですか」
ピカピカに磨かれ、分別された状態で店に運ばれてきた物しか見たことのない彼女は新鮮な発見に驚いている。
「っぐ……ゲホッ、ゲホッ!」
だが、すぐ目の前から漂う血の臭いに鼻を刺すように刺激されてむせ込んでしまう。
これはたまらないとリアンは、荷物の中から、一尺程の手拭いを取り出すと口と鼻を隠すように巻いた。
「確か……こうして」
幾分かは楽になったようで、手元に持った自前のナイフで牙に刃を当てて抉るように切り取る。
「ちょっと、難しいな……」
武器にもされている牙なのだから、ただのナイフで根負けしてしまう。
「あ。出来ました!」
それでもしつこく刃を当てている内にポッキリ折れた。
リアンはそれを嬉しそうにケイラへ見せびらかしにいく。
「おぅ、初めてにしちゃまぁまぁか」
生々しい音を立て、手を真っ赤に染めながら肉を切り取り小分けにしていた。
「ありがとうございます。ケイラさんはお肉取れました?」
「あぁ、今からこいつで腹ごしらえだ」
そう言って見せたのは、まだ血液の滴る胸肉だった。
「バイラスのお肉って臭いがきつくて、お酒に丸一日漬けとかないと消えないって」
今食べるにはまだ早いのではないかと知っていて伝えるが、ケイラは全く気にしてもいない。
「知ってる。だがな、臭みの抜き方ってものはそれだけじゃないんだよ」
そう言って削ぎ落とした肉を細かく食べやすい形へぶつ切りにすると旅の必需品、マッチを擦り火を起こすと焚き火を始めた。
「野菜も取らなきゃな」
そう言ってぶつ切りにした肉をバックから取り出した葉っぱで包むとその状態のまま火に放り込む。
「葉っぱが燃えてしまいますよ?」
「見てろって」
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