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驚いたことに一気に灰になるかと思われた葉っぱは真っ黒な炭になったまま塵一つとして飛び散らない。
「この葉っぱは特殊な材質を含んでるから中々燃えないんだ」
「へぇ……」
リアンはひたすら目を丸くする。
「そして、この葉っぱは臭い消しにも最適で香りも良くしてくれる。覚えとくとどっかで役立つかもな、見習い」
「は……はい! 覚えておきます!」
リアンも旅に役立つ本をたくさん読んでいた。それでもなお知らない世界の広さ。
彼はどれだけの経験を積んだのだろうか。
「さあて、ご対面。肉が焼けたぞ」
ケイラは木の棒で真っ黒に焦げた隅の匂いが充満する葉っぱを取り出すとナイフで葉っぱの包みを裂くようにして開く。
サクッとナイフはすんなりナイフを通し力を込めずとも刃を当てるだけで簡単に葉っぱは仰け反るようにゆっくりと中を見せる。
「嘘……スゴい……」
もし、ただ焼けば肉の匂いは鼻が曲がりそうになり筋張ってて堅い物の筈であった。
しかし葉で包んで焼いてからほんの一時くらいだろうか、香ばしく芳醇な香りが漂う肉が真っ黒な葉の上に丁寧に乗せられている。
「いただきますっ!」
ケイラはその肉を自前だろうかフォークで肉を突き刺す。プシュッと肉汁が弾け飛び出る音がリアンにも聞こえた。
「んっ! 美味いっ!」
パクっと大きな口で一口、仏頂面な顔が幸せそうに緩んでいる。
「……あっ」
つい押さえてはいたがリアンの涎が口元から出てしまい慌てて袖で拭う。
「食う?」
「い、いえ……そんな」
狩ったのも料理したのも全てケイラだ。自分には貰える義理もないと否定する。
「大丈夫だよ。飯食う権利は誰に立ってある」
「それにしっかり食わねぇと、旅の過酷さに耐えられないぞ」
「旅の過酷さ……」
そう聞かれるとリアンも眉がつり上がって無視することも出来ない。
「旅ってのは、強い猛獣だとか盗賊だとか。それもあるけどそれだけじゃない」
「汗で身体中が汗だらけになる砂漠、立っているだけで身体の重くなる荒野に果ては雲の上。そう言った環境は耐えず人に牙を剥く」
聞くだけで自分が明らか耐えられそうもなさそうな環境の数々、リアンも額に汗を掻き、旅の厳しさを感じる。
「だから食え。旅に出たきゃ強くなれ」
「はい……い、いただきますっ!」
そう言ってケイラは肉を一切れリアンに勧められ覚悟を決めると一つ指つまみ口の中に放り込んだ。
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