297人が本棚に入れています
本棚に追加
剥ぎ取りを終えると、素材は全て二人の鞄にしまう。牙と爪はリアン、肉と皮はケイラと言わずとも役割分担していた。
「そろそろ中腹につきますよ」
「おぅ」
ようやく話も半分にきたと、油断してしまったこの一瞬。
「ギャアアア!」
正面の方から、バイラスが一匹。二人の方へ思いっきり走ってきた。
「えっ!? きゃ!」
リアンは、とっさにケイラに襟首を掴まれ横に飛びかかられてしまう。
「静かにしてろ、こっちだ」
そばの岩陰に隠れてると、バイラスは二人に目もくれずどこかへ通り過ぎていった。
まるで何かから逃げているかのように。
「このまま真っ直ぐ向かって行くぞ」
「……はい」
また身をかがめて採掘場所へと確実に近づいていく。
「ここか」
「まだです。中腹の採掘場所は……このもう少し奥です」
二人の視線の先に、広大な平地がある。
その回りを陣取るように、バイラスたちの群が今までと比較にならない数で待ち構えていた。
「にしても群れ群れだ、しかし……なんだこの音?」
侵入者を拒んでいたバイラスの群れが、採掘場所がある奥の方からやってくる何かの為に道を開けた。
その重量感ありながらも軽快に刻まれる足音はだんだんと近くなってきた。
「いくら繁殖期でもあんなに見たことは……っ!?」
リアンも異変に気づきだしたその瞬間、言葉を失った。
目の前で信じられない光景を目の当たりにしてくれしまったからである。
「な、なんですか!? あれ!」
「ギシャアアアアアアアアア!!」
岩陰から出てきた物は、まさしく異形。
そう表現する他にない。
異形の者は、辺り一面にこだまする程、辺りを包み込んでしまうかのようにバイラス特有の鳴き声をあげた。
その声は耳を塞がずにはいられず、塞いでも耳の奥でキンと貫くように聞こえてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!