序章 始まりの息吹

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少し歩いて着いた先は岩山の中にポッカリと空いた洞窟だった。 「なんも見えんな」 「今明るくしますよ」 ここまで来るのに外もすっかり夕方になってしまい、洞窟の中も薄暗かった。 だが、リアンは暗闇の中でも慣れた足取りで、左右の壁から壁へ移動していくとほんのり明るくなっていく。 「やっとのことで採掘場所に着きましたぁ!」 両手をあげて喜ぶリアン。 どうやら、洞窟内のランプを点けて回っていたようで手前の方から少しずつ奥が見えるようになった。 「色々あったなぁ……」 同じ剣もう二、三本貰ってもいいくらいの難易度だったと疲弊しきったケイラは壁に寄りかかる。 「さて、こっからは私の仕事です! ケイラさんは休んでて下さい」 荷物を下ろして、ピッケルを構えて準備を始め、ここからが彼女の本領を発揮するところだ。 「へいへい」 ようやく全体が見渡せると、今まで通った来た自然に囲まれた岩山との違いが直ぐに分かる。 「あ、いいところに椅子が」 ピッケルやスコップが籠に入れて立てかけてあったり、ここに来た人の休憩用に木で出来たテーブルと椅子が作られてあったりと人の手が介入した跡が見て取れる。 その椅子の一つにドッサリと座ると、テーブルに顔を眠るように伏せた。 「せーの……よいしょ!」 そしてリアンは、ピッケルを振り返って壁目掛けて思い切り振り下ろした。 岩と鉄のぶつかる音が洞窟内に響く。 すかさず二回、三回と続いていった。 「ところでさー」 身体を起こしたケイラは座ったまま採掘中のリアンを見る。 「はい?」 作業の手は止めずに聞き耳を立てた。 「鉄鉱石とその辺の石の違いって分かるのか?」 地面にころがっている石を見てケイラの目に見たら、なにがどう違うのか見分けがつかない。 「長いこと採掘して、触ってみたら分かるんですけどね。親方は目で見ただけですぐ分かってしまうんですよ」 リアンは転がった石を手に取り、鉄鉱石か否かを見極めて不規則的に洞窟内に置いてあった籠に入れていく。 「そういうもんかね?」 「昔、鉄鉱石だと気づかずにピッケルで砕いてしまって親方に物凄く怒られましたよ」 苦笑いしながら一通り入れ終わると、再びピッケルを手に掘る作業を始めた。 「あぁ、やりそうやりそう」 イメージ通りだと、その光景を思い浮かべて笑っていた。
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