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やがて、トロッコが麓へとたどり着いた。
空はもう太陽が沈み切り暗くなっている。月灯りだけが頼りであった。
終着点の少し手前で登りレールになっており、そうやって勢いついていたトロッコも減速していく。
「はぁ……はぁ……」
減速したところを見計らってリアンがブレーキをかけるとトロッコも速度を失い、しばらくしたら止まっていった。
「ふぅー」
楽しかったと、笑いながらトロッコを先に降りる。
「ちょっと、これ……足が笑ってんだけど」
震える足で、トロッコからずり落ちるように降りていく。
「あと少しですよ」
麓まで降りれば来た時とは反対側の東側へむかえばすぐに町が見えている。
暗がりでよくは見えないが街に灯された灯りがよく目立っているので迷うことはなさそうだ。
「そもそも500G足りなかっただけでエラい目にあった」
金貨にして一枚分、今さら数え間違いでは許せる筈もないくらいの冒険だった。
「あ、そういえばそう、でしたね」
思い出したように、不安そうな声を出す。未だ自信の持てない自分の剣を渡さなければならないと。
「お前の剣はちゃんと使い込んでやるよ」
店に戻って、鉄鉱石を渡しそれでお終いだ。
今回の旅も、リアンとの関係もこれで。ふとそんな考えがよぎったが、すぐに切り替えた。
「よし、足は直った」
足が元に戻ったと膝を叩き調子を確かめる。
「ほら、さっさと帰ろうぜ」
あっという間に、元の調子に戻しトロッコのスピードで乱れた髪を掻き揚げる。
「はいっ!」
剣のことは一旦忘れたのか、明るい声に戻って返事をする。
二人は街の灯り目がけて走っていく。
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