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「それは、その……」
「そいつが作ったんだぜ」
ハッキリ言い出せず困っていたところ、後から戻ってきた店主が言ってしまう。
その場にいる人間で、そいつと指される人物はリアン以外に該当人物がいない。
「……え!?」
「いや、その……」
顔真っ赤にして戸惑っているリアン。
彼は何度も剣と、その頼りなさそうな彼女の顔を交互に見返して意外そうな顔をしていたが、次第に表情が変わっていく。
「とにかく……これ買うぞ」
気に入ったと、笑いながら剣を鞘に納める。
「まいどありっ!」
「いくらだ?」
もう自分の物にしたかのように片手でクルクルと振り回しながら聞く。
「8万Gだな」
その余裕の笑みは金額を聞いたと同時に消えていった。
「足りっかな……?」
適当にコートの中に入れていた布袋を金銭を数えようともせずに店主に渡した。
「小銭ばっかじゃねぇか……どれどれ」
ひっくり返してみると、大量のコインが出てきたが、中はどれもこれも価値の低い銅貨ばかり。
たまに金貨が混じってはいるがこれは数えるのに時間がかかると、店主は大変そうに数え始めた。
「ところで、本当にお前が打ったのか?」
その間、彼はリアンに再度問い詰める。
未だに信じ切れてないようだ。
「その……一応」
「ハッキリしねぇな……」
曖昧な答えに、どうしたものかと頭を掻いている彼。
「まるでドワーフ族が作ったみたいだ、まさかこんな所でお目にかかれるとはな」
世界にいくつも存在する人間以外の種族の名を口にする。
炭鉱や鍛冶仕事に精通し、何よりも得意とする種族たち。それらの仕事なら納得が行くほどの出来映えだと言うことだ。
「その、私のお父さん……義理ですけど、教えていただいたんです」
「そうか、どうりで」
それなら、話が分かると納得したようだ。
「つか、そんならこんな目立たないとこに置くなよ。気づかないぞこれ」
「本当、気づかなくてよかったんです! 私の打った剣ですから」
どうにも彼女は自分に自信を持ててないような印象を受ける。
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