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「山は街を出て、西にまっすぐだ。こっかれでも出れば見えるし、リアンもいるから大丈夫だろ」
店主は西側を指差して道を教える。
「はい。前に一緒に行ったことはあるんで道案内も任せて下さい」
そう意気込んでエプロンを外して準備を始めるリアン。
「そうか」
未だに彼女の同行に乗り気でないケイラ。
溜め息をつきながら先に店を出ると、後からリアンが口からツルハシの頭がはみ出ている煤で汚れた布袋を持って出てきた。
「よし、さっさと行くぞ」
準備が出来たと分かると、すぐに行動を開始した。
「はい!」
ケイラはまず街を出るべく真っ先に、人混みを掻き分けて街の出入り口の方へと向かっていく。
「ごめんなさい。ごめんなさい! ちょっと、待ってぇ!」
なんとか遅れない程度に足を急がせて何度も人とぶつかり、ようやく追いつけた。
「はぁ……面倒くせぇ」
「ごめんなさい」
肩で息をするリアンをどんくさいと罵るケイラ。自分から名乗り出て、いきなり足手まといになったのを申し訳なさそうに謝る。
「はぁ……」
そう言って、全く気にせずドンドン先へ行ってしまった。今まで独り身で他人を気遣う気持ちなどないようだ。
「私、大丈夫かなぁ」
いきなり幸先悪く、不安な顔を隠しながらついて行った。
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