胸に刺さる記憶の欠片。

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「この本の話の全てが本当とは限らないのよね…。」 「そうだね。人魚姫の説ってのは、いっぱいあるし……それよりもね。…姉さん、僕は貴女の目的は本屋(ここ)じゃなくて、真向かいのスーパーだった気がするんです。」 1人本屋でポツリと呟いた独り言に返ってきた背後からの声にぎくり、と固まる。 「……いつる……」 本をパタンと閉じる。ひきつった笑顔でクルリと振り向いてそっと顔を伺えば…… 「はい。なんでしょう?」 超満面の笑顔――!?怖い!怖い、怖いよ!笑顔なのになにかが黒いよ!あ、でもやっぱり可愛い…。っじゃなくて!やっば――っ!すごくお怒りのようす…… 「…えと…ごめんなさ…」 バチンッ 「いったぁ―――っ!」 い…まで発音する前に目の前の弟――いつる――から物凄いスピードのデコピンが飛んできた。 うぁぁ…相変わらず半端ない威力…。……いたい…。 おでこを擦りながら涙目で痛みを堪える。ここで何かまた彼の怒りを増長させたりしたらそれこそヤバイもの。 「本当に…あいか姉さん。貴女は…。もっと危機感を持ってください。 この街には今日来たばかりだというのに。1人でスーパーに行くと言い出して、着いてきた僕を置いて逃走、挙げ句はスーパーに居ないで本屋で立ち読み。しかも‘1人’で。」 僕がどれだけ心配したと思ってるんですか。と案に伝えてくれる弟に嬉しさと呆れが入り交じる。 「…解ったわ。ありがとう。ごめんなさい。…でもね、いつる、心配しすぎよ。姉さんだって1人でも買い物くらいできるよ。」
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