第二章 歪んだコスモス

4/8
前へ
/78ページ
次へ
 「…」 正直、楓に恐怖はなかった。目の前に降り立った少女は、とても美しかった。  澄んだ漆黒の瞳に、影を落とすほど長いまつげ。恰好が違えば、天使と言われるだろう。  呆然とする楓を見て、少女はまた笑った。 「ふふっ別にお姉さんを食べたりしないよ?」 そんな恐ろしいことを楽しげに言って、少女はとんっと床に降りた。  「お姉さん、名前は?」 「…江口…楓…」 「楓姉さん、か…」  少女は楽しそうに目を細めた。 「これっあげる♪」 「え!?」 ぽいっと投げられたモノを慌てて楓は受け止めた。  そして 「あ、あげるって…」 楓が次に顔を上げた時には 「…あれ?」 少女はもういなかった。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加