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走っている途中、声が聞こえ、楓は咄嗟に近くの茂みに隠れた。
「江口先生ー。どこにいるの?」
声の主は、教え子の井上佳美と桜庭奏だった。だが。
その手には
幼い子供には不似合いな
鈍く光る包丁を握っていた。
楓は悲鳴をあげたくなるのを懸命にこらえ、ひたすら山を駆け上がった。
山の中なら、見つかりにくい。山の中なら、見つかりにくい。
そう呪文のように唱えながら。
「きゃああああっ!!!!」
だが。楓は見落としていた。
ここの山は、草木が多すぎること。
草木が多すぎて先が見えにくいこと。
先が見えにくくて
突然
滝が現れることもあることを。
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