第四章 消えた影

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 走っている途中、声が聞こえ、楓は咄嗟に近くの茂みに隠れた。 「江口先生ー。どこにいるの?」 声の主は、教え子の井上佳美と桜庭奏だった。だが。 その手には 幼い子供には不似合いな 鈍く光る包丁を握っていた。  楓は悲鳴をあげたくなるのを懸命にこらえ、ひたすら山を駆け上がった。  山の中なら、見つかりにくい。山の中なら、見つかりにくい。 そう呪文のように唱えながら。 「きゃああああっ!!!!」 だが。楓は見落としていた。  ここの山は、草木が多すぎること。 草木が多すぎて先が見えにくいこと。 先が見えにくくて 突然 滝が現れることもあることを。
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