EP.000:Prologue~出逢い~

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「ほら、遅刻するよ?」 「はいはい、分かってるって」 姉に唆され、適当に返事をする。 俺は橘夏希。本日から高校生になった。 俺がこれから三年間通うことになる高校は、正式名称『私立高良桜春(たからおうしゅん)学園』という至って普通の進学校。 いや、普通とは入学時の偏差値に限っての話だった。 この学校は初等部、中等部とエスカレーター式で高校に上がることも出来るらしい。 それが理由の一つだろう、この学校は色んな意味で規模が桁違いだ。 まず挙げるのなら敷地。そりゃあもう一つの町は目じゃない位の広さ。 そして部活。数は軽く50を越えていて、毎年全国大会出場者を何人も送り出すらしい。 そんな超人の集まりみたいな学校に俺が進学した理由は、将来の夢が無かったからだ。 工業高校、商業高校など、様々な所を先生に薦められたが、俺には何かしっくりくる要素がなかった。将来の夢は高校になってじっくり考えたいし、進学校に進路を決めた。 ……分かってるさ、しっかりとした考えを持たなきゃならないって事くらい。 「行ってきまーす」 回想はさておき、そろそろ家を出ていく。今日も清々しい晴れ模様。燦々と降り注ぐ日光がとても心地よい。思わず背伸びしたくなる。 ちなみに、学校までは結構近い。部屋の窓から見える莫大な学校を毎日見てて、いつしかこんな学校で勉学に励んでみたいと思った事もあったっけ。 俺はゆったりまったり歩いて学校の門前に到着。部屋の窓から眺めてた時から思ってたけど、近くで見ると大きさが増して見えるな。 そのまま、桜が満開に咲いている大通りを通って式場となる体育館へと移動した。
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