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「……はっはっ……」
思い起こすこと数時間前。
俺は入学式の後にスーパーに寄って真っ直ぐ家に帰り、姉さんと一緒に料理を作った。ここまでは別にいい。特に問題は無かったんだが。
「……やべぇ……!」
いざ料理を食べようって時に姉さんはお酒を飲み始めた。まあ二十歳なわけだし、法律に抗ってるわけでもないんだが、姉さんは酔うと訳が分からなくなってしまう。
「間に合うか……!?」
それをなだめるため、姉さんのお世話してたらいつの間にか自分の睡眠時間まで削られ、爆睡。気付いたら遅刻ギリギリの時間だった。
今はバスに駆け込み乗車を試みている。
「いくぞ! はぁああっ!」
勢いよく飛び乗ろうとする……が。バスからドアを閉められ、俺はドアに衝突。それで倒れた俺を無視するように走っていくバス。
「……遅刻だああああああ!」
いくら文句を垂れても遅刻には変わりがなく。とぼとぼと校門まで歩いた。
別に家から見える距離だし、歩いていけるんだが、あのバスに乗らないと遅刻ギリギリの時間には間に合わなかった。
今はそれに乗り遅れ、どでかい門に行く手を阻まれている。つまり完全に遅刻したということだ。
「はぁ……ついてねぇ」
入学式の次の日からこの有り様なんて、これからやってけるのかな。先が思いやられる。
「あの……?」
大体あの運転手が悪いんだ。バスは数秒くらい待ってくれるだろうよ普通。ドアにぶつかってなお無視するとは。
「橘夏希くん……だよね」
たくいたいけな善良市民をこんな雑に……ってん?
誰かが俺の名前を呼ぶ。その人の方に目を向けると、そこには昨日窓の外を眺めていた少女の姿があった。名前は確か……
「綾中唯……さん?」
「うわぁ……! もう覚えてくれたの?」
「ん、まあね。でもそれはお互い様だよ」
自己紹介もせずに何故俺達が名前を知っているのか──相手が俺の名前を知っている理由は知らないが、俺は偶然彼女の名前を知る機会があったのだ。
俺が昨日先生に呼び出された時、同時に彼女は他の人に名前を呼ばれてたからだ。
ただそれを覚えてたってだけなんだけど……
「もしかして君も遅刻?」
「……はい」
どこかで聞いたような記憶があったというのもある。
どちらにしろ彼女の名前は覚えたのだからこの際どうでもいいのだが。
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