10人が本棚に入れています
本棚に追加
それにしてもどうするか。遅刻して門が閉まってるからってはいさようならと家に帰るわけにもいかない。よじ登ろうにも高さは俺の二倍はあるためキツい。仮に俺が登れても綾中さんには無理……だろう。
「門が動けばいいんですけどね……」
「オートロックだからね」
はぁ……本当にどうしたものか。何かの手違いで開いてくれないもんかね。
そうして門にもたれ掛かる。すると突然警告ブザーが鳴り始めた。
「うおっ! 何だよこの音は……?」
ブザーが鳴り響くなか、何故だかかなり重たそうな門が不快な音と共に開きだした。
「……開きましたね」
「これは誰か来る前に逃げるべき……だな?」
俺は綾中さんと目を合わせ相槌を打つと、急いで敷地内へと踏み込んだ。
「はぁっ、きつっ!」
ここまでくれば大丈夫だろう。結構遠くまで来たし。
「綾中さん大丈夫?」
息が少し乱れた綾中さんはコクりと頷いた。
これで一応敷地内には入れたが、まだまだ安心していいということはない。恐らくもうHRは始まっている。
次は教室に入るために先生の目を忍びながら移動しなければならない。これが一番大変なんじゃないか?
結局のところ今教室に行ってもHRが終わってから行っても遅刻扱いに変わりはないんだが。
それならいっそのこと先生に見つからないようHRまでどっかで隠れているのが無難かな。
「これから綾中さんはどうする?」
「うーん……夏希くんに合わせます」
俺を名前で呼んでくれた? 滅茶苦茶嬉しいんだけど。淡い期待を抱いてしまう。俺も綾中さんを名前で呼んだ方がいいのか……って違う違う。
今はこの状況を打開する策をだな……
「先生、教室に居ないといいんですが」
「あ、あぁ。でも今はHR中だろうし……」
混乱から一気に現実に引き戻された。ありがたい。
じゃなくてこれからどうするんだよ。いつまでもここにいるわけにはいかないし。
最初のコメントを投稿しよう!