ほんの数秒

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そんな両親を見て育った葵は、まっすぐに育って来た 人を許しなさい 人を信頼しないさい 裏切ってはいけない 欺いてはいけない 騙してほくそえむよりも 騙されて、学べる大人になりなさい と育てられた そんな葵にとって、年の近い… けれど、今まで会った事の無いような基喜のような存在は、興味深い対象だった 明るい… けれど、何となく寂しげな… そして、ちょっとひねくれた… そんな印象の基喜 葵とは正反対と言える今までを送って来た基喜が 対照的なのは、当たり前の事だった どんな人なんだろう? そんな事を、葵は考える 学校を辞めて、ここに就職したって美里さんに聞いたけど なんで、学校を辞めてまで 仕事を始めたんだろう? 色んな事を知りたいと 感じていた それが恋愛感情なのか 単なる興味なのか それが恋だと言えるのか 葵にとって確信は無かったけれど、今まで異性に対して感じた事のないものだという事だけは、確かだった 顔を合わせる度に、目で追う時間は少しずつ増えて行った 時々現場に行く事があった その時には、差し入れを持って行ったりもする 葵は手作りのお菓子を持って行く事もあり、皆に大好評で 喜んで貰えると、また頑張って作ってしまう 基喜は、いつも少しはにかみながら、ありがとうと言う その表情に、葵も少し顔が熱くなる 基喜も、葵の素直さや 純粋さ そんな、自分の中に無いものに確実に惹かれていた 互いに少しずつ惹かれながらも、葵はオクテで 基喜は、美里の知り合いだかららと、踏み込めないでいた
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