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「葵ちゃん、ちょっと用事頼まれてくれへん?」
美里の言葉に
「はぁい」
と返事をする葵
届け先への書類を美里が手渡し
「郵便局も回って来てくれる?」
「はい」
「あ…けど、ちょっと距離があるなぁ…
車…」
と言いかけた美里に
「ペーパードライバーです」
と、苦笑いする葵
事務所から葵を伴って外に出ながら、入り口近くに停めてあるバイクを指して
「じゃあ、そこの原付使って
原付くらいやったら、大丈夫やろ?」
「多分…」
「なんか、心配やなぁ…」
と、その時、秀行が倉庫から出て来た
「ちょっと、秀~」
美里の声に、顔を向けた秀行
「なんすか?」
「今、暇やろ?」
「暇ちゃいますよ、作業中です
俺を見たら、暇してると思てるでしょ?」
「そうちゃうけど、あんたはいつも暇そうに見えるんやろな
ちょっと、葵ちゃんを送って行ったって」
「美里さん
私大丈夫ですから
自転車でもええし、原付くらい乗れますよ」
「あかん、あかん
事故でも遭うたらどうすんの
春子に合わせる顔が無くなるわ
秀、頼むわ」
その言葉に、秀行が
「ちょっと待って下さい」
そう言うと、倉庫の中に消えて行き、出て来た時には基喜を連れていた
「秀さんっ、何なんすかっ?」
と、基喜が非難がましい声を出したが、そんな事は気にもせず
「こいつに行かせますわ
俺、ちょっと手ぇ離されへんし、今やったらこいつが居らんでも、仕事出来ますよって」
「秀さんっ、何を…」
「じゃぁ、基喜でええわ 葵ちゃん送って行ったってな
行き先は、葵ちゃんが知ってるさかいに」
秀行は
「上手いことやれよ」
と、基喜に耳打ちして作業の為に倉庫に向かって戻って行き、
美里は事務所の中に消えて行った
残されたのは、基喜と葵だけで、言葉も意見も無視されて、そこに取り残されたようになっていた
「車、回して来るわ…」
「はい…お願いします」
意識すれば意識する程、態度や言葉がぎこちなくなる
嬉しいような
気まずいような
そんな空気が二人の間にあった
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