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「やっぱ、峻ちゃんなんや!!」
「久しぶりやなぁ、ウチでバイトしてるんやって?」
久しぶりに会った峻 制服姿の峻を見るのは初めてだった
淡い恋心が、フワフワと心の中に浮かんで来た
少し気崩したところが、峻らしいと思った
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キッチリとネクタイを締めていれば、少し笑ってしまったかも知れない
幼い頃から、少女になり、峻を異性として意識するようになって
恋というよりも、憧れる気持ちで、少しでも顔が見たくて盗み見るように見つめた頃の気持ちが、心の中に少し蘇っていた
葵の記憶の中の、いきがっていた高校生の峻よりも、ずっと大人になって、男らしくなって
逞しくすら感じられるその姿は
胸をキュッと鷲掴みにしたような感覚を与えていた
「うん
ちょっと前からね
誰に聞いたん?」
「基喜から」
「そうなんやぁ
峻ちゃん、元気そうやね」
「葵ちゃんも元気そうや 綺麗になったんちゃうか?」
「嘘ばっかり そんな事言わんといて」
「嘘ちゃうて ほんま、綺麗になったわ」
二人の会話の中に、基喜は入って行けなかった
知り合いだったとしても不思議では無いし
けれど、さっきまでの葵とは全く違うその表情に、嫉妬のような焦りのようなそんな気持ちが湧き上がっていた
「葵ちゃん、もうそろそろ帰らなアカンわ」
基喜がそう声を掛けた
「あっ、そっか 峻ちゃん、たまには帰っておいでよ」
そう、車に乗り込みながら言うと
「親父、元気?じいさんも」
「うん、元気 美里さんも元気やで
峻ちゃんの顔みたら、絶対喜ぶから 私も待ってるし」
「葵ちゃんがそう言うんやったら、近いうちに一回帰るわ」
「うん」
「じゃぁ、峻さん また」
「おう、基喜も頑張れよ」
基喜は車を発信させ、峻は走り去るのを見送っていた
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