ほんの数秒

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「おっ、基喜、お疲れ えらい怒られとったなぁ 相変わらず あんたもお茶要るか?」 美里の言葉に 「いや、いいっす!また耕介さんに怒鳴られるんで」 「ええやん、お茶くらい」 そう言って、煎茶の入った湯飲みを基喜の前に置いた 美里は、耕介の妹で、広瀬悟という建築家と結婚 この工務店の手伝いをしている 気さくでさっぱりした性格で、子供が居ないからか、面倒見が良いという点も加味されて 若い子達を、叱ったり励ましたり… 姉の様な母の様な、そんな風に慕われている その時、基喜には全く聞き覚えの無い声がして 「美里さん これってこっちで良かったんかなぁ?」 と言いながら事務所と自宅を繋ぐ戸を開けて、若い女性が入ってきた 手にはダンボールの箱を持っていて、それは完全に顔を隠していたが 声から、若いという事を直感したし 最初に基喜の目に映ったのは、足元で 綺麗な足に少し見とれていた ダンボールを床に下ろし、顔を上げた時に目が合った 二人の目は、同時にお互いを捉え ほんの数秒見つめあった 二人の始めての出会いだった
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