ほんの数秒

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葵が窓の外に目をやると 基喜が汗だくになって動いている 背は180センチを少し超えた位はあり、伸ばした髪を 少し明るい色に染めて、ゴムでまとめている 仕事柄、ガッチリした体格で小麦色に日焼けしていた ちょっと見には、きつそうな目だけれど それは、実は少し目が悪いからだ Tシャツから出た、逞しい腕の左上腕の外側に 何でついたのか葵には判らなかったが、15センチくらいの傷跡が見えていて それがとても痛々しくも、印象的だった 耕介は基喜に向かって色々と指示を出している 今でこそ耕介は、父親の跡を継いで、工務店の社長に収まってはいるが 昔は、大阪で1・2を争うヤクザ組織の組員だった だが、ある事をきっかけにキッパリと足を洗い、父親の下に付き 今は社長と呼ばれている 親子みたい… そんな風に葵は感じていた 耕介には、一人息子が居るが 跡を継ぐ気は無く 独り暮らしをしていて、余り家には寄り付かない 葵にとっても、幼馴染の様な存在だが 長い間会っていなかった 峻というその息子は 葵の初恋の相手でもあった その淡い恋心は、ちょっとした憧れに変化し ここで働いていれば、会えるかも知れない… そういう気持ちが、少なからず葵の中にあった
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