ほんの数秒

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葵の存在は、事務所の周囲を通れば自然と目に付き 基喜以外に居る2人の若い職人は、特に目ざとく見つけていた 「基喜っ」 5歳年上の秀行が声を掛ける 振り向いた基喜 「あれ、誰やねんっ? なかなか可愛いやん」 「美里さんの親友の娘って言うたかなぁ 今日からバイトに来てるらしいっすよ」 「マジでかっ? 美里さんの知ってる子ぉかぁ……」 がっくりした声を出す秀行 「なんでそれがガックリするポイントなんすか?」 「阿呆か、お前 美里さんの知ってる子やったら、手ぇ出せんやんけ」 「秀さん… 優美さんっちゅう彼女が居てるやないっすか… また他の女にちょっかい出したら、優美さん激怒を通り越しますよ……」 秀行は、中学卒業と同時に、ここに就職 もともと父親が大工だったから、進路は決めていた 仕事は出来るし 耕介からは絶大な信頼を受けている が、女癖の悪さは、仕事とは関係無いという事を 見事に体現している 優美という彼女とは、もう三年の付き合いだが よく優美が我慢しているものだと、基喜は思っていた 「そんなもん、関係あるかい 男が女に興味持たんと なんで男やって言えるねん」 「あっ 優美さん」 と、基喜が言うと 慌ててその方向に振り向き それが冗談だと知ると 「基喜っ ふざけた事するやんけ…」 と、基喜にプロレス技をかけ始めた 「うっ…… 秀さん…ゆ…許してくだ…」 その技を止めたのは、美里の声だった
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