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全てを魔のものにするなんて考えは、間違っている。
種族関係無しにいろんな関係を築けるこの世界を、壊すなんておかしい。
ドランドやマリーに会う前の僕だったならば、迷うことなくドンドに賛成をして全てを壊していただろうけど……。
沢山の人に出会って沢山気づかされたから。
「上の世界は捨てたもんじゃない。沢山の可能性を秘めた素敵な世界なんだ。そんな世界を壊すのは、許さない」
僕達魔王が司る負の感情だけでなく、喜びや愛や、そんな正の感情も沢山溢れる世界は、凄く素敵。
素敵なものは壊しちゃいけない。
そうさせない為にも、ドンドの茶の瞳を見つめた。
「変わり者の魔王が……! てめえは愚図で脆弱な人に騙されてんだよ! 人や天使なんてぇちんけな生き物は必要ねえ!」
「人は愚図でも脆弱でもないよ」
「そうです。人はなんとも逞しく強い」
ラウンが言葉を続けてくれる。
「地上は実は楽しいんだから!!」
そこにドゥーマが乗ってくれ、これで形成は五分と五分。
ドンド側に向いていた形成が五分になったもんだから、ドンドは口をへの字にしている。
「亀。亀はどうなんだよ?」
「え? ええ!? おら!?」
テーブルに手をつき立ち上がったウルゥが呼んだのは、今まで黙っていた魔王。
そいつは自分で自分を指差している
“愚鈍”
を司る、愚脳ダール。
ぼさぼさで金と茶の斑な髪に糸目を持ち、背中にあるのは亀の甲羅。
そばかすのある顔は突然話を振られて困りに困りきっている。
ダールは愚脳と異名がついてるだけあって、自分の意見をなかなか持たない奴だから、どう答えていいか分からないんだろうね。
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