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「悠太さん、もう一度呼びかけてみて!」
Dr.は隅に立っている悠太に手招きをし、常務に場所をあけるように指示する。
常務が渋々栞のそばから離れると、悠太が話しかける。
「栞さん。悠太だよ。分かる?」
栞は再び目を開けようとする。
「悠太さん続けて!何でもいいからどんどん話しかけて!」
Dr.が悠太に言う。
「痛いところはない?
みんなが許してくれるなら、オレずーっとついているよ。たから頑張って!」
栞は少しうなづき、悠太側の指が動く。
「あ……先生!手に触れてもいいですか?」
「ああ(笑)」
Dr.は深くうなづく。
悠太は自分の手のひらの上に栞の手を乗せて、指や手の甲を撫でる。
「栞さん。分かるんだよね?」
「💧」
栞はうなづく。
「よかった💧元気になったら、また美味しいご飯作ってよね。」
また栞はうなづく。
悠太は自分の涙をシャツの袖で拭う。
「💧エヘヘ(笑)なんか嬉しいのに涙がでる💧」
栞が口を動かし、何かを言う。
「うん(笑)」
悠太は両手で栞の手を握る。
「悠太、栞ちゃんは何て言ったんだ?」
常務は悠太に聞く。
「『泣かないで。』って…言った気がします。」
「多分そうですね。」
Dr.が同意する。
「栞さん。また来ていいかな?」
悠太は栞に話しかけると、栞がうなづく。
「今度は花を持ってくるね。春になったから色々咲き始めたよ。」
栞は悠太の言葉を受けて、また口を動かす。
「うん。そうだね。」
悠太は栞の手をしっかり握り、返事をする。
「今度は何て言ったんだ?」
またも常務が聞く。
「分かりません。でも、一所懸命話そうとしてくれてるから、返事しなきゃ…って思って。」
悠太は栞の手をぎゅっと握ってから、布団の上に置く。
「また明日来るね。ゆっくり休んでね。」
栞はしばらく悠太を見つめているが、目を閉じてうなづき、面会は終わる。
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