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午後、栞が昼寝をするのを見届けてから、悠太は買い物に出掛け、ついでに栞の薬ももらいに病院に寄る。
「よぉ!悠太!」
不意に名前を呼ばれ、振り返ると、杉村が赤ん坊を抱いて立っていた。
「杉村さん!?お久しぶりです。杉村さんのお子さんですか?」
「ああ(笑)オレによく似て可愛いだろ?」
「そうですね……。」
悠太はあまり似てないんじゃないかと思うが、当たり障りのない返事をする。
「常務の家で、栞の介護してんだって?」
「看病です!!」
「介護同然だろ?植物状態じゃ。」
「もう、歩けます。少しずつ家事もしてるし。」
「へぇ~!じゃ、結婚すんのか?」
「いや、まだそう言うところまではいかなくて……。」
「だよな?
ヤる事もヤれないし、ま、ヤれたとしても、お前の[犯罪者]の遺伝子は世に出さない方がいいから、完全不妊の栞と慰め合うには丁度いいか(笑)」
杉村は皮肉を言い、冷笑する。
「ちょっと急いでるんで、失礼します。」
悠太は杉村に頭を下げ、走って病院を後にする。
悔しい。
悔しい。
悔しい。
悔しい。
栞と自分は、お互いを思いやり精一杯生きているのに、第三者から見れば、こんなものなのか?
走り疲れて、ベンチに座り考える。
悠太の前を、恋人同士や家族連れが通り過ぎる。
「ちくしょう💧」
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