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「千歳、ちょっといい」
ボスが、私から少し離れた大きな扉から顔だけだして私をみていた。
とっさの行動ができず、ただ頷く。
ボスが無駄な動きや音を減らしこっちに来て、ソファーに座っている私の向かいにボスも腰を下ろした。
「…ご苦労様」
その言葉にも頷いた。
「難しい判断だったね」
頷けない。
「君のことだから、落ち込んでいるんだと思って」
「…………もしかしたら、殺さなくてもよかったのかもしれないんです」
「…今まで君が死を増やすことは一切なかったね」
だからなんだっていうんだ。したことは変わらない。
「すみません」
ボスはずっと私の顔を覗き込んでる。深い大空色のかすり傷一つないビー玉の目は、私のことを見透かされそうで昔から苦手だった。あまり直視できない。今だって、みたら私がさっきまで考えていたこともばれてしまいそうで。
「はー、やっぱり僕じゃフォローできないよ」
さっきより響き渡るボスの声、
私に向かっての言葉じゃないことはすぐにわかった。
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