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チリで大きな地震があったことを知ったのは、僕がこの国に入って二日目のことだった。
夜の街を案内してもらう為に雇った日本人ガイドから聞いた話だったが、その時はたいして気にしていなかった。
僕がリオに到着したのは、カーニバルが終わってまだ数日しか経っていない時期だった。
カーニバルの熱気がまだ微かに残っているような町並みを、タクシーの窓から眺め、僕は自分が南米にやってきたということを実感していた。
想像以上に長いフライトの疲れがまだ癒えていなくて、体調が悪かったし、思っていた以上に天候が悪く、気温も低かったからかもしれない。
それに、僕はその日から始まるこの旅のスケジュールを頭の中でいっぱいにしていたからだと思う。
いくら同じ南米で地震が起きたからといって、ブラジルに地震はないと聞いていたし、自分には全く関係ないだろうと高をくくっていた。
それよりも街を歩いている時に強盗にあったり、犯罪に巻き込まれないように注意しなくてはいけないと胆に銘じていた。
ブラジルは有名な犯罪多発国家であり、日本と比べてもかなり治安は悪いというのは前から知っていた。
日本にいる頃からネットで情報を集めたりもしていた。
「ブラジルではパンを買うよりも銃を買う方が簡単だ」
などという記事を読んで、相当の覚悟を決めてきたものだ。
それでも危険を承知で、僕はこの国にやって来た。
心の奥底から僕が求めていたものは〝エロス〟と〝スリル〟を織り交ぜた〝快楽〟だった……。
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