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俺は車を走らせる。
妻も子どもも乗せず、一人で運転するなんてどれくらい振りだろうか。
しかもちょっとした遠出。
高速道路から臨む景色は少々淡白だが、僅かながらの解放感を俺は感じていた。
自由。
そんな言葉が浮かぶ。
広がる青空。
春を思わせる陽気。
そして、カーステレオから流れる音楽。
自由。
その言葉を、もう一度。
軽快な音楽。
ハンドルを持つ手でリズムを刻む。
空の下
僕らは飛び出し
今日も歌をうたう
思わず口からこぼれ出るフレーズ。
この歌は、自由を唄っている。
音楽を奏でる人達は、きっとそれぞれに自由を感じ、求めているのだろう。
10年前の俺。
この音楽の向こう側にはそいつがいる。
あの頃の俺は、こんなにも自由に満ち溢れていたんだな。
さらに記憶をなぞるように、俺は歌詞を口ずさむ。
唯一残していたあの頃の音源CD。
懐かしい思い出と共に押し入れの奥から引っ張り出したそれは、一本の電話が切っ掛けだった。
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