走り出せ、俺達

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俺はノブにこんこんと説明した。 結局、俺たちの目指すものが何かという考えで落ち着き、オカジマの加入交渉を渋々了承するという運びとなった。 当のオカジマは既に何度かサムライマシンガンのライブを見ており、その時所属バンドを持っていなかった奴にとっては誘いの話は降って湧いた幸運。 二つ返事で快諾した。 その後、バンドは俺の予想通りアマチュア離れしたケミストリーを産み出し、想像を超える飛躍を遂げることになるのだが、結局ノブは最後までオカジマの事を認められないでいたんだろうと思う。 バンドが全てだった俺たちにとっては必要な男であることは間違いなかったし、不満を口に出すこともなく、仲良くやっていた。 でもやっぱりノブはバンドの顔でいたかったんだ。 ひとりで東京へ行ったのもそういう心理があったかもしれない。 そういう意味で、やはりノブにとってオカジマはある程度煙たい存在だったのだ。 さて当のオカジマはどうだったか。 こちらはこちらでノブの事は認めていた。 加入の動機もノブと一緒にバンドをしたいという思いがあったらしい。 歯に衣着せぬその言動は場の雰囲気をつくる。 当初、俺の心配は全くの杞憂であった。 解散前はノブの勝手な態度にある程度の険悪はあったが、オカジマのノブへの基本的な想いは不変であったように思う。 そして今、携帯電話に写るその名前。 懐かしさに対する嬉しさと同時に、事実を知ったであろうその落胆。 かける言葉が見当たらねえな。 そう考えながら、俺は電話に出る。
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