走り出せ、俺達

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久しぶりだな。 そんな会話で互いに挨拶をする。 だが、その声色は硬い。 やはりどう言っていいのか。 向こうも言葉を選んでいる様子。 しかし痺れを切らすようにしてオカジマの方から切り出した。 「死んでたってな。ユキヒロから聞いたよ」 ノブが東京へ行ってから。 俺もそうだが、当然オカジマも誰も何をしていたか知らない。 いきなり突きつけられる事実に、俺たちは誰もがそれを抱えきれずに困惑していた。 「そんな、3年前に死んでたって言われても、なんの実感も湧いてこねえよ。それに、自殺なんだって?俺、何て言っていいかわかんねえよ」 俺もだよ、皆同じさ。 やりきれなさの滲むオカジマの声に、俺はなだめるように語りかける。 3年前だろ、7年間、あいつ、一体どうしてたんだろうな。 さらにトーンダウンするオカジマの声。 俺は一息つく。 このままいても、悲しみが渦巻くだけ。 話題を変えよう。 ところでよ、お前は今どうしてんだよ。 オカジマははじめ、関係ねえとばかりに淡々と答えていたが、話す内に気が晴れてきたのだろう。 徐々にあいつが持つ明るさの片鱗が顔を出してきた。 あっ、そうだ。 バンド。 俺は大事な事を思い出した。
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