走り出せ、俺達

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オカジマは話を聞きつつも水を飲む。 煙を吸い、吐く。 守るものか。 一言、呟いた。 「結婚しようがしまいが、変わるのは、やっぱ変わっちまうのさ」 何をするにも二の足を踏んじまうのは同じなんだよ。 躊躇っていうか、大人っぽくカッコつけて、我慢しちまうのさ。 俺とリョータは顔を見合わせる。 一度首を傾げてから、俺はオカジマの名を呼んだ。 何かあったのか。 その質問に対し、オカジマはうつむきながら答える。 思い出したのさ、あの時の事。 「ノブの東京行き、実は俺、誘われてたんだよ。お前らとは別に」 バンドの解散が決定してさよならライブが迫る頃、あいつは俺に言ってきた。 一緒に東京へ行こう。 俺達の夢を掴もう。 あの目は本気だった。 その分、俺は、試されてるとも思ったんだ。 実際そうじゃないのは分かってる。 試していたのは俺自身だったのかもしれない。 とにかく、俺はその話を断った。
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