走り出せ、俺達

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就職も決まってたし、今さらその話はねえよとも思った。 あいつは淋しそうな顔してたけど、それ以上食い下がる事もなく、わかった。とだけ呟いてたよ。 その時、理解したんだよ。 ああ、俺が言ってた夢って言葉は、その程度の物だったんだなって。 あの頃は、音楽に明け暮れているのが楽しくて、ずっとこのままでいたいって思ってた。 あわよくばプロになって、こいつで食っていけりゃあって考えた事もあったよ。 でも今になってみて分かるんだよな。 音楽にしても何にしても、働いて金を得るって真理は根本的に変わらない。 そしてそこには、決して良いことばかりじゃないはずなんだ。 好きなことは楽なこと。 将来をそういった安直な視点で見ていた事は否定できないさ。 だからこそ、全てをかなぐり捨てて東京へ行くことには抵抗があった。 既に敷かれたレールを逸れるのが怖かったんだ。 ノブがどこまで考えていたかは分からねえ。 だけど少なくとも、俺よりは音楽に対し真摯に向き合っていたと思うんだ。 俺はノブと一緒に行けなかった。 そして... そこでオカジマは言葉を切り、うつ向いた。 俺もリョータも。 今のオカジマにかける言葉は山ほど持っている。 なぜならみんな気持ちは同じだからだ。 でも今は待った。 オカジマの想い。 そいつを全部、吐き出せばいい。
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