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「バンドの調子はどうだ。練習してんだろ」
まあ、それなりに形にはなってきてるさ。
それでも互いに仕事や家庭を抱える身。
そうそう集まれる時間や日にちが合わねえし、そういう意味での苦労が一番大きいぜ。
ところで、お前、まだ返事が浮いたままなんだけど、結婚式で俺たちのバンド、やんのか?
大前提の話なのだが、俺は改めてユキヒロに確認した。
返答によってはバンドのモチベーションを大きく左右するものとなる。
楽しいだけでもやってられるが、目標があるに越した事はない。
「ああ、それなんだがな」
ユキヒロの言葉は多少重い。
あの件、結構俺が先走って考えてたプランでよ、いざ式の段取りの話になったとき、式の雰囲気とか相手側の一族とかの事を考えたら中々実際やるとなると難しそうでな...
え、まさかひょっとして...
中止?
俺は鉛の気配を感じさせるほどに重量感を含むその言葉尻を引っ張る。
いやいや、そういう訳じゃあねえ。
意外にもユキヒロは最悪のケースを即否定する。
「2次会さ。ちょっとしたパーティハウスを予定してるからよ。そこなら演奏的にも設備が整うし、なにより気兼ねなくできるしな」
あ、そゆこと。
俺は胸を撫で下ろす。
確かに親戚一同集まるなかでバカみてーな大音量流すのもアホらしいな。
心配すんなよ。
言い出したのは俺なんだからその辺はしっかりやるさ。
それより、きっちりかつての輝き取り戻すんだぜ。
期待してんだからよ。
「変なプレッシャーかけてんじゃあねーぞ。ところで、今日は何か用があったのか」
おう、そうそう。
お前に相談があるんだよ。
なんだろう。
話の様子からはそんなに重い話じゃなさそうだけど、こいつこないだは突然とんでもない事言いやがったからな。
おう、何だ。
と、答えながらも警戒と心の準備はしておく。
「ノブの墓参りしねえか」
あーなるほど。
そういうことか。
いいぜ。
いつ?
即答した。
そういうのなら余計でもバチは当たらねえだろう。
暇さえ合えば、行くぜ。
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