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オカジマとリョータは来られなかった。
バンドの練習するときもそうなんだが、3人ともフリーになる日なんてのはそうそうない。
だいたい誰かが無理してるし、そうやって何とか工面して作る時間なんだから、出来ればバンド活動に充てたい。
ということで、体面上のリーダーである俺が代表してユキヒロと一緒に行くことになったんだ。
話は変わるが、俺たちがかつて通っていた学校はちょっとした有名校で、広い区域から入学を募っていて他県からの志望も少なくない。
オカジマとユキヒロは地元民だが、俺やリョータ、ノブは県外からやって来ていた。
特にノブの実家は田舎を絵に描いたような田舎であり、そこに辿り着くまでもかなりの時間を要する。
遠路はるばる来てくれた事と、親元を離れて暮らす境遇。
土地柄もあるだろうが、そういうことも相まって、おばちゃんの手厚いおもてなしという事に繋がるのか。
ユキヒロと合流してから車で2時間。
昔なら電車で3時間かかっていた。
青々とした稲に囲まれた素朴な村。
田舎ならではのでっかい建家。
何年経っても変わらねえな。
家の庭に車を入れると、すぐに中から小柄な女性が姿を表した。
「まー、よお来たなあ。いらっしゃい、ほんま久しぶりやわあ」
間違いなくつられるその快活な笑顔。
こっちも変わらねえな。
元気そうで何よりだ。
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