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村人の数は10人ほど。それぞれが戦闘用であろう武器や防具を身にまとっているが、武器はくず鉄を集めてかためたような剣や槍。防具は……服の一部に金属を縫い付けただけのもの。
時代錯誤もはなはだしい、苦笑い。
体長2メートル弱ほどの真っ黒な毛並みをもつ大型犬は20匹ほどで、鋭い牙を剥き出しに村人に襲いかかっている。
そんな時に後方に立っていた杖のような物を持った人達が聞いたこともないような言葉を発したと思ったら突然、火球や水の矢、土塊を大型犬に向けて放ったのだ。
これには、様々な不可思議な現象を見てきた裕司でも驚愕した。
「嘘だろ!?」
と思わず声をあげてしまうほどに。
普段から立場上超能力を見ることが多かった。それでも何もない所から火や水を具現化し、それを敵に向かって発射する。しかもそんなことをしでかす人物が複数人同時に存在する。
驚かないわけがなかった。
裕司の声に気付いて、村人も大型犬も裕司の方を振り向いた。振り向いた村人達の顔色が悪い。
よっぽど苦戦していたんだな。助けますか。恩を売っておいて損はない。
と思い、ボブから飛び降りて大型犬のもとへと走る。
一瞬で一番近くにいた、ボブの威圧感で動けなくなっている大型犬の前に到達して、体重の乗った蹴りを一つ。
裕司にとってはただの蹴り。しかし……
メキッ ボキッ
内臓や骨を粉砕した感触が足の甲から伝わり、大型犬は10メートルほと地面と平行に飛び、そして着地。
もはや原形をとどめておらず、起き上がることはなかった。
近くにいた大型犬にも同様の蹴りや殴りを加える。
ふと横を見ると、逃げ回る大型犬を嬉々として追い回し、一方的に攻め立てるボブがいて、村人達はどうしていいか分からず困惑しているようにも、ただただ呆気にとられているようにも見えた。
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裕司は綺麗に整頓された、どことなく上品さが感じられる部屋に一人でいた。
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