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一方的な殲滅の後、裕司は戦闘していた村人の中から出てきた三人に連れられて、村の中で一番大きいであろう家の客間らしき部屋に通されていた。
村長か、それに近い役職の人の家だろうとあたりをつける。
「でも……まさか言葉が通じないとは思わなかった」
この部屋に連れられる少し前のことを思い出す。
顔が真っ青のままだった村人達に
「大丈夫でしたか?」
と尋ねた時に、
「々c〆ゞか!%a*○」
と返答された時は焦りを隠せず、動揺した。
能力によって、世界中の主要言語は概(おおむ)ね理解している。有名じゃないマイナーな言語であっても基礎くらいはできている。
それなのにここの住人の話した言語は全く聞いたことのないものであった。
裕司は自分のいる部屋を見回す。
随分と大きな上質な毛皮の絨毯がひいてあり、目の前にはそれなりに綺麗なテーブル。そして自分が座っているイス。
この村の高い地位に就いているであろう人物の持ち物と村人が持っていた武器や着ていた服から、この村の生活水準や技術などを推測する。
壁際には高級感あふれる壺。そして……
裕司は目的の物を見つけ席をたつ。
それは本棚。
本の数は多くないが大丈夫だろう。
裕司は本棚に近づき、全ての本を異空間に取り込んだ。
取り込んだ本の文字を直接脳を刺激して記憶させる。
自分の“体内”であればある程度いじることができる。裕司の能力は異空間内のみで作用することから自分の体内も一種の異空間であると仮定しているが、身体の表面ーー主に外気に直接触れる部分ーーはいじれないことからもほぼ間違いでないと考えている。
脳も異空間内であることから少しならいじることができ、直接記憶させることくらいなら頭が凄く疲れるものの、問題はない。
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