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裕司の能力は“改造”ということに特化している。
元ある素材の形を変えたり、素材同士を組み合わせたりといろいろと加工できる。一種の錬金術のようなものだと裕司は考えている。
ただし元となる素材は裕司の体内にあるであろう空間ーー裕司は異空間と呼んでいるーーに取り込み、そこでしかその能力を使うことはできないが………
ふと目が覚める。
配下ーー裕司の能力で造り出した犬や鳥たちーーがやけに慌ただしい。
裕司は動物たちが騒がしい理由に疑問を感じつつ、眠い目をこすりながら徐々に身体を起こした。深かった霧も晴れて、太陽の光が巨木の枝や葉の間から差し込んでいる。
「あんまり寝た気がしないな……」
いつの間にか朝になっていたらしい。
ゆっくりと周りを見渡す。
「…………!?」
ここで裕司は違和感を覚えた。今裕司がいる場所と昨晩寝た場所が違う。朝であろうがこんなに明るくなる森を裕司が選ぶはずもないし、何より生えてる植物がまるで違う。昨晩いた森は主に落葉広葉樹が生い茂っていて、もっとじめついた感じだったが、今はそれなりに木々も視界に入るが、見たこともないような様々な色の花が咲き乱れている。
「これはかなりまずい気がする…………」
昨晩のことを思い出す。いつも通り人との接触を断ち、今回は霧が深いことで有名な山に入った。
それでも今朝は全く記憶にない場所にいる。
なんらかの手段でここに移動させられたに違いない。
可能性が高いのは敵に運ばれたというもの。だがこれを実践するとなると裕司の配下の動物全てを運ばなきゃいけないし、その前に絶対に動物に気づかれる。
他に可能性が高いのは空間転移系の能力者による強制移動。これが最有力か…
他にも神隠しやタイムリープのような怪奇現象も考えられなくもないが現実的でない。
全然わからない………現時点で情報が少なすぎる。
裕司は結論を出せずにいた。
だが幸いなことに裕司は辺りを確認する術(すべ)がある。
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