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「お前たちは近辺の調査だ。行ってこい」
裕司はすぐに動物たちに辺りを探るように指示を出した。自分たちが敵の手に落ちてないことを祈って………
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「報告通り」
裕司は自分の配下とは違う獣の気配を感じ、両肩に異空間の入口をつくる。そしてそこに手を突っ込み二振りの刀を取り出した。
両方とも同じ造りの刀であるが、異常に長い。刀身が約4メートルある。大太刀と分類される日本刀の一つで何よりもその長さに特徴があるが、長い分重くなり、一撃の破壊力は遠心力も加わり特筆ものではあるが、その重さのせいで隙が大きく、小回りもきかない為あまり使われない代物。そもそも大太刀の普通のサイズの刀身が150センチほどなので、裕司の得物の異常さがよく分かる。しかもそれを片手で一本ずつ扱っている。
裕司はゆっくりと構え、だんだんと近づいてくる生き物に意識を集中した。
「……………………」
裕司は近づいてきた生き物を見て茫然となる。目を閉じて深呼吸、そしてゆっくりと目を開ける。
「………………………」
やっぱりかわらない。見た目は狼。
けれど…… 大きさが規格外。高さが3メートル弱で頭から尻までおよそ10メートル。尻尾の長さも加えればさらに長くなる。体中が綺麗な銀色の毛に覆われていて、口内にはどんな動物だろうが一瞬で噛みちぎるような歯、牙が並んでおり、真っ赤な輝きを見せる双眼は裕司のことを目だけで殺さんばかりに睨みつけている。何より纏っている空気というか雰囲気が、今まで裕司が出会ってきた猛獣と違いすぎる。常人ならすくみあがって動けなくなるどころか、目があうだけで失神してしまいそうなほどの威圧感。
だからこそ………
「楽しみだ」
裕司は唇の端を少し上げ、ニヤリと笑い呟いた。
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