君がいた夏

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お前は野球部のマネージャーとして 俺を近くで支えてくれた。 3年の夏。 甲子園の予選試合で 決勝まで残った。 よく晴れた日だった。 9回裏 最後の俺達の攻め。 ツーアウト満塁。 バッターボックスに立ったのは俺。 1対4で負けていた。 目の前に見えるのは ボードのカウント。 焦る気持ち プレッシャーが 俺を押し潰そうとしていた。 不安で怖くて ベンチにいるお前を見たんだ。 お前は 大丈夫だよと言うように 微笑んでいた。 俺よりも力強い笑顔だった。 そのとき、 甲子園に連れていってやりたい、と 強く思い バットをふったんだ。 ボールは綺麗な弧を描きながらボードに当たった。 静まり返った球場は 一気に歓声に包まれた。 嬉しかった。 やっとお前を甲子園に連れていける。 ベースを回るときは お前を背追って走った。 俺に背負われたお前は何度も 『ありがとう』 と、泣きながら笑顔で言った。
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