君がいた夏

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そんなダメな俺にお前は言ったな。 『私の分まで走ってよ。私にできないこと、私の変わりにしてよ。』 幼馴染みのお前は 俺がいくら外見が変わっても 泣きながら、本気で当たってきてくれた奴だった。 お前は走れない。 “喘息” 走ったらいつ、発作が起きて死ぬかもわからない。 座っているだけでも発作は起きる。 そんな恐怖は俺の外見より遥かにうわまっていただろう。 20歳まで生きられるかどうか。 泣きながら俺に夢を託してくれたお前を 泣きながら抱き締めたのを覚えてる。 思い出したんだ。 ずーっとずーっと前、 草野球でお前と知り合って お前が喘息を煩ってから お前が草野球を辞めたとき、 『俺がお前を甲子園に連れてくから』 そのときもお前は泣いたな。 泣きながら 笑ったな。
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