君がいた夏

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甲子園で、お前の葬式は出席できなかった。 だから、俺はここまで頑張ってこれたんだと思う。 決勝。 また、予選の時と同じ 9回裏、バッターボックスに立ったのは俺。 ベンチを見ても お前はいない 解ってたけどベンチを見た。 そしたら お前はいたんだ。 遺影だったけど お前はあのときと同じ 笑顔だった。 俺は一瞬流した涙を拭いた。 俺は お前にまだ恩返しできてねぇんだ。 お前との思い出を思い出しながら バットを振った。 お前に会ったのは小1の草野球でチームが一緒だった。 まったく違うお前の性が新鮮で 俺達はすぐ仲良くなった。 小4のときお前は発作を起こして野球を辞めた。 泣きながら夢を託してくれた夕暮れの土手で 俺はお前を背負って走った。 お前はまた、 俺の知ってる笑顔に戻ったよな。 カキーン――――……‥ “でました!!逆転さよならホームランです!!” わあっと言う歓声に包まれた俺はベンチに駆けて行き、 顧問からお前の遺影を取って またベースを二人で回った。 泣きながら回った。 ゆっくり踏みしめるように。 俺のホームラン お前へ届いたか?
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