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「あいつの留学ってもしかしたらスペクタクルな陰謀のためだったんじゃないかな?」
いつの間にか教室に入っていた紗英ちゃんは、机につっぷして物心ついてから私にふりかかりつづけた「いっちゃん」という災いのリピートを繰り返していた私の背後からそう言った。私は顔をゆっくりあげる。
「何? スペクタクルな陰謀って」
「お年頃になったほのかに自分以外の虫がつかないように、やっとかなきゃいけないこと全部前倒しにしとくという陰謀」
「そんなあ」
「まあ、一哉の頭脳がなきゃできない陰謀だけど、底にある思惑が子どもっぽすぎて笑える」
私は笑えないよ紗英ちゃん。
いっちゃんの頭脳。世界の人口の上位5%以内なんだって。だからかな? いっちゃんが考えている事が私にはわからないのは。
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